第 316 回 PTT のお知らせ


日時:2005年11月17日(木) 18:30 から


場所:慶應大学理工学部(矢上キャンパス) 14棟201教室(セミナールーム1)

■アクセス情報
 ●矢上キャンパス内の案内
      【14棟-201教室(セミナールーム1)】
   キャンパス内地図
     http://www.keio.ac.jp/access/yagami.html
   で,入り口からスロープを上がって警備室の手前の階段を
   上ると地図で(3)と付番された創想館という(一部ガラス張りの)
   建物のピロティです.14棟というのは,この創想館の別名です.
   ピロティ内左手にある外階段で2階にお上がりください.
   入り口を入るとベンチを挟んで14-201〜14-204という教室が
   あります.そのうちの14棟201教室が会場です.
   セミナールーム1というのもこの部屋の別名です.
   (警備室に寄る必要はありません.直接,当該教室まで
   お越しください)
 ●矢上キャンパスまでの案内
   【慶應義塾大学理工学部(矢上キャンパス)】
  ・東急東横線日吉駅より徒歩15分程度.
   綱島街道を渋谷方向に進み,2つめの信号(仲の谷交差点)
   で右折.細い道に入って直進してください.しばらく行くと,
   矢上キャンパス入口の緩い坂道(スロープ)があります.
   地図は下記にあります.
    http://www.st.keio.ac.jp/access/
  ・もしくは,JR横須賀線,新川崎駅よりタクシーで7分程度.

◆発表その1

話者:
大駒誠一(無所属)

話題:
プログラム記憶方式コンピュータの最初のプログラム

概要:

   最初のプログラム記憶方式のコンピュータは1949年9月
   に完成した英国ケンブリッジ大学のEDSACと信じられているが、
   実はその一年前に英国マンチェスター大学のSSEM
   (Small-Scale Experimental Machine,小規模実験機、
   通称 Baby)が完成していた。SSEMはその名前が示す通り、
   ブラウン管がメモリとして使えるかどうかの実験機であり、
   記憶容量はわずか32語で、命令の種類は7個しかなかった。
   このSSEMで、1948年6月21日与えられた整数の最大の
   約数を求める27語のプログラムが初めて答をだし、
   世界最初のプログラム記憶方式のコンピュータで動いた
   最初のプログラムとなった。このプログラムの紹介である。

◆発表その2

話者:
川島英之(慶應義塾大学理工学部情報工学科)

話題:
センサデータベースシステムの開発

概要:

   本発表ではセンサデータベースシステムKRAFTについて述べる.
   KRAFTは様々なセンサデータを管理すると共に以下の3つの機能
   を提供する.(1)データの永続性と鮮度,(2)センサデータを
   管理する抽象型,(3)連続的にセンサデータを監視する機能.
   (1)の機能を提供するためにKRAFTはローカルディスクの代わりに
   リモートメモリを用いる.各ログレコードはリモートログサーバ
   へTCPを用いて並行的に送られる.リカバリ時にはリモートログ
   サーバの全ログレコードが時間順に集められ,冪等にデータベース
   サーバへと送り戻される.(2)の機能を提供するためにKRAFTは
   関係データモデルを拡張し,類似シーケンスを検索できる
   センサ型を提供する.類似性の距離尺度としてはユークリッド
   距離とダイナミックタイムワーピング距離を提供する.
   (3)の機能を提供するために,KRAFTはデータベースサーバ内部で
   連続的にクエリを実行できるモニタを提供する.


第 316 回 PTTメモ

出席者:22名
飯島 正,篠沢佳久,寺中晶郁,深津康行,森 崇志,森田武史,山口新平, 山口高平(慶應義塾大),滝田 裕,多田好克,寺田 実,丸山一貴(電気通信大), 伊知地 宏(ラムダ数教研),石畑 清(明治大),並木美太郎(東京農工大) 山口文彦(東京理科大),繁富利恵,副田俊介,田中哲朗,筧 一彦(東京大), 上坂明未(フェリス女学院大),酒井香代子


質疑応答(発表その2):

【ある島での鳥の挙動を監視するプロジェクト(?)に関して】
Q:センサに関して, 電源等はどうするのか.  省電力も大切ではないか.  
A:省電力を考慮したクエリ最適化が熱心に研究されている。

Q:センサはどの程度の能力があり, どういった情報を入手することができるのか.  
A:光、加速度、温度、磁場など。

【「全ての家庭にロボットを!」】
Q:ロボット内ではそれほど処理をしていないのか.  
A:単純なアクションについてはロボット内部で処理をするが、
  WEBコンテンツ解析などはバックエンドのサーバで処理する。

Q:ロボットはシナリオベースでしか動けないのか
A:そうだ。ロボットがコンテキストを管理することで認識精度を高める。

Q:人間との受け答えをさせようとする場合, 対象とするドメインを区切ることで
  ロボット側をパッシブに動かすことはできないか.  
A:上手に区切れば可能かもしれないが、問題とドメインに依存すると考える。

Q:示された実験のデータから, 「人間はロボットに触れようとする傾向がある」
  といえそうか.  
A:今までの実験結果からは、「興味がある人間は、ロボットに触れようとする傾
  向がある」と言える。

【DBMS】
Q:I/Oを使う場合, KRAFTの実装方法とI/Oのスケジューリングとが衝突してしまう
  ことはないか.  
A: それはありうるが、詳細な実験をしないとわからず、
  今後の課題にさせて頂きたい。

Q:モデルはどうなっているのか
A:センサデータ用のセンサオブジェクト型を新規に考案

Q:SQLに新しい型に相当するものを導入しているのか.  
A: 導入している。効率的にデータを保持し、データマイニング演算を実行できる
  「センサ型」を導入し、SQLを拡張している。


Q:デッドラインミスに対する対策は.  
A:現在のところ、デッドラインミスに対して適応的なシステムが振舞う設計は実
  現していない。応用によってはインプリサイス処理を導入すべきかもしれない。


Q:バッファI/Oが発生してもスレッドのリアルタイム処理は実現可能か?
A:そのデータ取得は今後の課題

Q:リモートメモリにログデータを置くのは、データがいらないからか?
A:違う。ログデータはトランザクション一貫性保証のために必要であるから
   重要である。リモートメモリを用いるのは性能改善のため。

Q:リモートメモリは信用できない, というスタンスに立っているのか.  
A:単一では信用できないが、複数台なら信用してもよかろう、というスタンスに
  立っている。

Q:オンメモリDBやクラスターの場合はどうか.  
A:オンメモリDBは、サイズが固定であるから、センサデータ格納には向かないと
  考えられ、川島のターゲットには向かないと考えられる。
  クラスターの場合には、巨大DBを構築可能であるし、リモートWALとの親和性
  が高いと考えられるが、効率的な実現には不明点がまだ多い。

Q:センサからのデータを収集するという立場から, 別のアプローチを考え
  ることはできそうにないか.  
A:「センサデータは補完可能である」という立場からすれば、データをある程度
  間引いて格納し、確率により補完してもよいと考えられる。それゆえ「データ
  がたいして重要ではない」というアプリに対しては、そのような設計方式が適
  切であろう。
  しかしながら、「どのデータが重要なのかよくわからないから、とにかく全部
  蓄えておいて欲しい」という種類のアプリにとっては、全てのデータを収集す
  る本研究の設計方式がふさわしい。
  自分としてはこの方針に興味を覚えている。