第 198 回 PTT のお知らせ
日時: 1994年 6月23日 (木) 18:30 から
場所: 東京工業大学 大岡山西7号館 204号室
(1) 東工大は...
東急目蒲線/大井町線大岡山駅前にあります.
ひとつしかない改札をおりたら左側に出てください.
迷う事はないと思います.
(2) 大岡山西7号館は...
東工大の正門を入るとすぐ右手に学内地図があります.
これを参考にしてお越しください.徒歩約3分です.
(3) 204号室は...
西7号館の入口まで到達すれば,迷う事はないようにして
おきます.なお,会場は2階ですが,地上階が3階なので,
階段を一階分下る事になります.
話者: 東京工業大学情報ネットワーク運用センター助手の越塚氏
題目:
共有対話オブジェクトアーキテクチャ
--- 分散環境上でGUIアプリケーション間の協調処理を支援するGUIソフトウェ
アアーキテクチャ ---
概要:
本研究の最終目標は、アプリケーション間の協調処理を支援するグラフィカル
ユーザインタフェース(GUI)のソフトウェアアーキテクチャを提案し、それ
に基づいた次世代のウィンドウシステムを実際に構築することである。
近年、GUIアプリケーション間やその構成要素間の協調動作によって実装され
た高度なGUIがいくつか提案されている。第一に、GUIアプリケーションの分散
実装やグループウェアといった、分散環境上で機能分散されたGUIアプリケー
ションがある。第二に、アプリケーション連携やツール統合のように、既存の
GUIアプリケーションを協調動作させ、それらの上での高度なインターオペラ
ビリティの実現がある。その他にも、スクリプト処理によるGUI環境内でのバ
ッチ型ユーザインタフェースや、画面の読み上げによって視覚障害者の支援を
行うアプリケーション独立なシステムなどもその一つである。ところが上記の
応用はいずれも、通常のGUIの実装と比べて極めて困難である。その主な理由
の一つは、既存のGUIのプラットホームが、GUIアプリケーション間の協調を支
援するように設計されていないことである。しかも、このような協調処理の実
現に適した、GUIソフトウェアアーキテクチャやデータ/制御転送の機構など
は、未だ明らかにされていない。
そこで、本研究の第一の課題は、GUIアプリケーション間の協調動作を扱える
GUIソフトウェアのアーキテクチャとして、共有対話オブジェクトアーキテク
チャを提案することである。本アーキテクチャの主な特徴は三つある。第一に、
GUIアプリケーション間の協調に必要なデータと制御の移動を、対話オブジェ
クトの階層で行うことである。第二に、その移動のために、対話オブジェクト
を格納する、GUI用に特化された分散共有記憶を用いることである。第三に、
GUIアプリケーションは、同一の分散共有記憶を共有して協調する複数のタス
クによって構成されることである。本発表では、本アーキテクチャが、他の
GUIアプリケーション間の協調手法と比べてより柔軟な機能を提供できること
を、マルチユーザインタフェース、スクリプト処理、アプリケーション連携、
アシスティブ技術、アプリケーションの分散実装などの応用に関して議論する。
本研究の第二の課題は、共有対話オブジェクトアーキテクチャが、ネットワー
ク接続された一般的なワークステーション環境で、安定した高応答性を実現す
るための実装技術を明らかにすることである。それらは、1) 対話オブジェク
トを格納する順序付きR木構造、2) ユーザの操作に対して安定した応答時間を
得るような分散共有記憶のコヒーレンスプロトコル、3) GUIソフトウェアを構
成する複数のタスク間でのリアルタイムスケジューリングなどが含まれる。我々
はこの実装技術の有効性を検証するために、共有対話オブジェクトアーキテク
チャに基いたウィンドウシステムを設計し、その評価システムを実装した。こ
の評価システムを用いた性能評価では、ウィンドウ上の対話オブジェクトの変
更操作に対して約30ミリ秒程度、ピッキング操作に対して1ミリ秒以下の応答
時間が得られている。
第 198 回 PTTメモ
農工大の並木-みたちゃんです。前回第198回PTTのメモです。
198回は東工大の越塚先生からご発表を頂きました。
日時: 1994年6月23日(木)18:30〜20:00
場所: 東京工業大学西7号館
題目: 共有対話オブジェクトアーキテクチャ
--- 分散環境上でGUIアプリケーション間の協調処理を支援するGUI
ソフトウェアアーキテクチャ ---
話者: 越塚 登 (東京工業大学大学院 情報理工学研究科
数理・計算科学専攻 計算機支援情報科学講座)
出席者:
並木 美太郎,
横田 大輔,
天野 純一,
早川 栄一,
田所 里夏 (以上 農工大),
小川 宏高,
下國 均,
岩崎 英哉,
立山 義祐 (以上 東大),
倉部 淳,
伊知地 宏,
佐口 泰之 (以上 富士ゼロックス),
佐々木 毅史,
水本 雅彦,
太田 正幸,
野沢 義雄,
森 玲人,
白石 昌靖,
清水 亮博,
成田 哲也,
中嶋 良彰,
小野木 渡,
新美 誠,
大野 浩之,
柏木 伸一郎,
草野 伸美,
豊田 正史,
古川 陽,
森實 裕人,
大島 芳樹,
菊池 豊,
籠谷 裕人,
脇田 建 (以上 東工大),
多田 好克,
中山 泰一,
中村 嘉志,
高田 哲司,
齋藤 正伸,
赤池 英夫 (以上 電通大),
清水 和久 (NECリフト),
佐々木 崇郎 (慶大),
岡野 裕之 (日本IBM),
和田 英一
,以上43名
概要:
質疑応答:
本研究の最終目標は、アプリケーション間の協調処理を支援するグラフィカル
ユーザインタフェース(GUI)のソフトウェアアーキテクチャを提案し、それ
に基づいた次世代のウィンドウシステムを実際に構築することである[1,4]。
近年、GUIアプリケーション間やその構成要素間の協調動作によって実装され
た高度なGUIがいくつか提案されている。第一に、GUIアプリケーションの分散
実装やグループウェアといった、分散環境上で機能分散されたGUIアプリケー
ションがある。第二に、アプリケーション連携やツール統合のように、既存の
GUIアプリケーションを協調動作させ、それらの上での高度なインターオペラ
ビリティの実現がある。その他にも、スクリプト処理によるGUI環境内でのバッ
チ型ユーザインタフェースや、画面の読み上げによって視覚障害者の支援を行
うアプリケーション独立なシステムなどもその一つである。ところが上記の応
用はいずれも、通常のGUIの実装と比べて極めて困難である。その主な理由の
一つは、既存のGUIのプラットホームが、GUIアプリケーション間の協調を支援
するように設計されていないことである。しかも、このような協調処理の実現
に適した、GUIソフトウェアアーキテクチャやデータ/制御転送の機構などは、
未だ明らかにされていない。
そこで、本研究の第一の課題は、GUIアプリケーション間の協調動作を扱える
GUIソフトウェアのアーキテクチャとして、『共有対話オブジェクトアーキテ
クチャ』を提案することである [1,4,5]。本アーキテクチャの主な特徴は三つ
ある。第一に、GUIアプリケーション間の協調に必要なデータと制御の移動を、
対話オブジェクトの階層で行うことである。第二に、その移動のために、対話
オブジェクトを格納する、GUI用に特化された分散共有記憶を用いることであ
る。第三に、GUIアプリケーションは、同一の分散共有記憶を共有して協調す
る複数のタスクによって構成されることである。本発表では、本アーキテクチャ
が、他のGUIアプリケーション間の協調手法と比べてより柔軟な機能を提供で
きることを、マルチユーザインタフェース [2,4]、スクリプト処理 [7]、アプ
リケーション連携、アシスティブ技術、アプリケーションの分散実装 [2]など
の応用に関して議論した。
本研究の第二の課題は、共有対話オブジェクトアーキテクチャが、ネットワー
ク接続された一般的なワークステーション環境で、安定した高応答性を実現す
るための実装技術を明らかにすることである。それらは、1) 対話オブジェク
トを格納する順序付きR木構造、2) ユーザの操作に対して安定した応答時間を
得るような分散共有記憶のコヒーレンスプロトコル、3) GUIソフトウェアを構
成する複数のタスク間でのリアルタイムスケジューリングなどが含まれる [3]。
我々はこの実装技術の有効性を検証するために、共有対話オブジェクトアーキ
テクチャに基いたウィンドウシステムを設計し、その評価システムを実装した。
この評価システムを用いた性能評価では、分散共有されたウィンドウ上の対話
オブジェクトの変更操作に対して約30ミリ秒程度、ピッキング操作に対して1
ミリ秒以下の応答時間が得られている。
【参考文献】
[1] Noboru Koshizuka. BTRON2 Window System: A Window System Facilitating
Cooperation among GUI Applications in Distributed Environments,
Doctor Dissertation, Deparment of Information Science, the
Univertity of Tokyo, Dec., 1993. (Technocal Report 94-06e, 本論文は
ftp.is.s.u-tokyo.ac.jp よりanonymous ftpで取得可能です)
[2] Noboru Koshizuka and Ken Sakamura. Window Real-Objects: A
Distributed Shared Memory for Distributed Impelmentation of GUI
Applications, In Proceedings of ACM Symposium on User Interface
Software and Technology (UIST '93), ACM, Nov., 1993, p.237-247.
[3] Noboru Koshizuka and Ken Sakamura. Highly-Responsive Implementation
of the BTRON2 Window System, In Proceedings of the Tenth TRON
Project International Symposium, IEEE Computer Society Press, Dec.,
1993, p.82-93.
[4] Noboru Koshizuka, Hiroaki Takada, Ken Sakamura. Window Shared Data
Pool: A New BTRON Window System, In Proceedings of the Eighth TRON
Project Symposium, IEEE Computer Society Press, Dec., 1991,
p.151-168.
[5] 越塚 登, 高田 広章, 坂村 健, Window Shared Data Pool, 情報処理学会オ
ペレーティングシステム研究会 52-2, 情報処理学会, 1991年9月.
[6] 越塚 登. 共有対話オブジェクト方式におけるマルチユーザインタフェース
システムの設計と実装, 情報処理学会論文誌, 第35巻, 第9号, 1994年9月.
(掲載予定)
[7] Noboru Koshizuka and Ken Sakamura. Implementation of Post-it
Model Using Shared Interaction Object Architecture,
in submitting, 1994.