皆様あけましておめでとうございます.本年も PTT をよろしくお願いいた します.
計算機と電子楽器双方の進歩により自動演奏や自動作編曲を試みるのは容 易になったが,人間による演奏や作編曲に肩を並べるのはそう簡単なことでは ない.演奏や作曲には音楽を分析し理解する必要があるからだ.計算機による 音楽分析は分析目的・対象によってさまざまな手法が試みられているが,話者 は旋律を分析して構造や特徴を抽出する手法に関して考察した.また,分析手 法を評価する手段として,旋律に簡単な伴奏をつける自動編曲システムを試作 した.旋律分析の手法と,分析結果を編曲作業にどう用いるかを中心にお話す る.
食事: 17:00までに,03-3812-2111 ext.7410 金田迄.
113 文京区本郷 7-3-1 東京大学工学部計数工学科 岩崎英哉 03-812-2111 ext. 7411 iwasaki@wadalab.t.u-tokyo.ac.jp
計算機による自動演奏/作編曲には音楽を分析し理解する過程が必要であ る。話者は旋律の分析に注目し、分析の手法を評価する手段として、旋律から の自動編曲システムを試作した。
旋律の分析として、与えられた旋律から類似する部分旋律を抽出し、旋律 の形式やフレーズを特定することを試みた。 類似する旋律の抽出に関しては、 まず、類似する旋律であると判断する基準を設定し、2つの旋律が類似してい るか否かの判断を旋律のパターンマッチとして捉えた。具体的には、旋律を音 高の変化とリズムの2つの要素でパターン表現し、それぞれのパターンマッチ から類似しているか否かを判断するという方法を検討した。パターンマッチは、 要素を単純に比較する方法と、パターンにWalsh変換を施した特徴ベクト ル間の距離を類似度と見なす方法の2つを試みた。簡単な形式の旋律に関して これらの方法で実験を行い、旋律の形式が特定できること、類似する旋律の抽 出がフレーズを特定する手がかりとなること、さらに、パターンマッチの2つ の方法に関する問題点を示した。
旋律分析の結果の編曲への利用として、旋律の和音進行の決定に、旋律の 形式やフレーズに関する情報を用いて、自然な和音進行を作る方法を示した。
参加者の皆様からは、旋律のパターン表現の方法、パターンマッチの方法、 特徴ベクトルを用いる意味などに関して、多くの有益な御意見、御指摘をいた だいた。さらに「音楽的知識を排除して純粋に統計的処理を行なう方法と、音 楽的知識を適当に取り入れて処理する方法のどちらが見込みがあるのか」関し ても貴重な御意見をいただいた。また、実際に編曲結果のデモを聴いて頂き、 編曲の問題点だけでなく、自動演奏に関してもアドバイスをいただいた。
新田 泉 東京大学大学院工学系研究科 修士課程2年 東京大学工学部計数工学科和田研究室